契約結婚のススメ
「借金だらけで、彼女のご両親は彼女が離婚した時、お金の清算はしてくれたけど縁は切られたのよ。それきりだから、美加はそれも悔しくてね……。私はその頃から見ているから」

 なるほど。希子さんが美加に好意的な理由がわかった。身内に見離れた母娘を、希子さんは影で支えていたんだろう。

「母親が亡くなって働く理由も消えて、美加は芸能界を引退したいそうよ。私は夫亡き後、枇杷亭の切り札に美加を据えようと思った」

「ですが、今の社長は?」

「陽菜の叔父ね。あの人は駄目よ。経営のセンスはないし、枇杷亭とまったく関係のないはずの彼の妻が乗り込んできて、もうめちゃくちゃ。このままなら枇杷亭は今度こそ潰れるわ」

 そうなのか。そんな事情が。

「でも美加はもう駄目ね」

 希子さんは俺をジッと見る。

「あなたと美加がこんなふうに噂になっているなら、手を引かせるしかないわね」

 いよいよ、伯父の話をすべきか。

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