契約結婚のススメ
 なにかある度に胸の奥で蠢く、わけもわからぬ嫉妬心。

 どす黒くてとても醜いの。

 私がもっと強くて、どんな噂があったって笑い飛ばせるようならよかったのに。

 一貴さんにあなたを信じてるって言える自分なら、一貴さんの言葉をそのまま素直に受け取れることができたのに。

『愛してるよ、陽菜』

 私は自分の中の負の心が怖い。

 どうして一貴さんの周りは美人だらけなの。どうして今日も帰りが遅いの。

 マンションでひとりきり一貴さんの帰りを待っていると、自分の心に押しつぶされそうになる。



 出かけていた義母は夕方帰ってきた。

「ただいま。ゼリー買ってきたわよ。食後にいただきましょ」

「わーい。ありがとう」

 それから沢山話をした。

 実は祖父の店の二階を狙っていた話や、これからのこと。

「帰りたくなるまで、ここにいなさい」

「うん。ありがとう」

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