契約結婚のススメ
 いったいどこから話をしたらいいのかと、ワインを流し込みながら考えた。

 美加だけが悪いわけじゃない。俺がもっと気を付けていれば、陽菜を苦しめたりはしなかったはずだ。

 ただどうしても納得できない。

「陽菜は、なぜ」

「なにか色々と耳に入ってくるらしいわ。でも詳しく言わないのよ。美加にも『あなたのせいじゃなくて、私が弱いだけですから』って言ってね」

「美加が?」

「ええ、陽菜に何か言ったりしてたらしいわ」

 希子さんが辛そうに額に手をあてる。

 やはり美加は陽菜になにかしていたのか。

 驚くような発言をしておいて、冗談だと笑うというあの女の常套手段だ。

『〝一貴は私のために結婚したの〟ってさ』

 仁が耳にしたのと同じようなことを、陽菜の耳にも入れていたのか。

 夫婦で出席したパーティーに美加もいた時があった。恐らくその時か。もしくはクルーザーの披露宴中に?

 それとも直接嫌がらせ?

「美加のやつ」

 思わずつぶやくと、希子さんが複雑な表情をした。

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