御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
第六章 同じ未来を生きる幸せ
黎のロンドンからの帰国を明日に控え、菫はキッチンに立ち料理に励んでいた。
 
電話やメッセージで現地での様子を聞くと、仕事量は多く忙しそうだ。

それでも今回の出張の目的であるサポート業務については無事に完結し今は雑多な案件を片付けているらしい。

もしかしたら赴任前の下準備をしているのかもしれない。

新居を決めたり現地のスタッフと今後の方針について話し合ったり。

合間においしいレストランをリサーチしている可能性もある。

菫は黎の大好物である筑前煮の味をたしかめながら、あれこれ思いを巡らせていた。

「あ、こっちもOK」

ついさっきできあがりの音が流れたオーブンを開いてみると、中から甘い匂いが流れてくる。

ラム酒につけこんだレーズンをふんだんに使った、黎からのリクエストが多い大人向けのパウンドケーキだ。

焼きたてもおいしいが、ひと晩寝かせるとさらに風味が増すので明日帰国する黎のために前日の今日焼いておいたのだ。

取り出したケーキを置いたテーブルには、他にもいくつもの料理が並んでいる。

そのどれもが黎の好物で、菫は満足げにそれらを眺めた。

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