御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
第三章 初めての恋人
黎と結ばれた夜から一週間が経ち、菫は「恋人がいる」という生まれて初めての生活を少しずつ楽しめるようになっていた。

ふたりとも仕事が忙しく平日に会うのは難しいが、毎日連絡を取り合い些細な話題で心ときめかせるという、まるで中高生でも満足できないだろうやりとりによって菫の日常に彩りが加わった。

菫も黎もそれぞれが相手の状況を大きく誤解し無駄に過ごした二年間を取り戻そうと考えているが、菫は今の自分は二年どころではなく学生時代すべてを取り戻しているような気がしていた。
 
高校までは共学校に通い男子との出会いはあったが、家族との関係に悩み、恋愛どころではなかった。

それに元来人付き合いが得意ではない菫が男子に興味を持つことなどなく、初恋すら経験しないまま高校生活を終えた。
 
その後上京し進学したのは女子大で、出席の厳しさと課題の多さで遊びにも行けず、バイトの時間を確保するだけで精一杯。
 
そして今、菫は学生時代に経験できたはずの恋愛のときめきや喜び、そして切なさをも経験し始めている。
 
とはいえ菫は未だ自分に恋人ができたことを実感できずにいた。

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