御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
恋人は長く恋い焦がれていた初恋の男性で、まるで夢のようなこの現実が信じられないのは当然なのだ。
 
菫にとって黎はなにもかもが自分とはつり合わない、ハイスペックすぎる相手だ。

自分が黎の恋人にふさわしくないというのも自覚している。
 
黎は大企業の後継者で見た目も秀逸。かたや菫は他人に自慢できる特技もなにも持たない単なる会社員。

おまけに地方に住む両親との関係に悩み、頼れる存在にも乏しい。
 
考えれば考えるほど自分に黎に見合う価値があるとは思えず、つい悲観的になる。
 
けれどネガティブな感情が生まれるたび、菫は黎をあきらめられずに苦しんでいた二年間を思い出す。
 
結婚が決まったと嘘をついてでもあきらめようとしたのに、結局黎への想いが捨てきれなかった二年間の苦しみに比べれば、黎との間にある格差など些細なものだ。
 
たくさんの涙を流し、黎以外の男性は好きになれないと思い知った菫にとって、黎に愛されること以外、大した問題ではないのだ。
 
黎とともに生きていけるのならば、あとはどうとでもなる。
 
その思いが今の菫を強くしている。



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