婚約破棄のシーンだったので傍観者になってみようと思ったけれど、ちょっとだけ彼女の幸せを願ってみた
「シエラ。私は君との婚約を破棄することを今、宣言する」

 これが噂の婚約破棄のシーンか、と思ってみる。よく乙女ゲームとか、乙女ゲームの世界に転生しちゃった話とか、そんな世界のワンシーンでよくあるやつ。まさか、自分がそれをリアルに目撃できるとは思ってもいなかった。

 ここは、リアストという名前の国であり、さらにその国にある王立学校の大広間である。そして今日は、その学校の卒業記念パーティ。
 そこで、今年卒業を迎えるこの国の皇太子が、婚約者である公爵令嬢に向かって冒頭のセリフを放ったところであった。

 それを傍観しているのは隣国のトビンセンから留学している少女、名をユカエルと言う。
 しかしこの娘、実はどっかの世界の地球という惑星にある日本という国に住んでいた記憶を持つ娘。その記憶によると、どうやらこの世界は剣と愛が咲き乱れる乙女ゲームと呼ばれる世界らしい。そしてその記憶によると、こんな婚約破棄のシーンは珍しくもなんともなくよくあること、らしい。そして、たいてい婚約破棄された令嬢のほうはとっても極悪令嬢で、婚約破棄した皇太子のほうには、とっても可憐なヒロインがもれなくついてくる、らしい。

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