婚約破棄のシーンだったので傍観者になってみようと思ったけれど、ちょっとだけ彼女の幸せを願ってみた
 ああ、よく見たら、そのクソ皇太子の後ろに可憐で儚げな少女がいるではないか。金色ともオレンジ色とも言えないような微妙な色の髪の毛を肩までの長さでふわふわにしたままの少女。

「皇太子殿下。理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか」

 一般的には極悪令嬢的ポジションに位置するシエラが背筋を伸ばし、凛とした声で尋ねた。このシエラはこのリアスト国の三つか四つかいくつあるかも忘れてしまったけど、公爵家のうちの一つに属する公爵家の令嬢だ。公爵令嬢らしく、金色で長くて真っすぐな整えられた髪。それをこのパーティに合わせて、みつあみにして彼女の瞳と同じ色のシュシュでまとめ髪にアレンジしてある。少し垂れ下がる後れ毛が、微妙に色っぽい。

「理由だと? 君はあれだけのことをジェシカにしておきながら、それを問うのか」

 始まったのか、クソ皇太子の令嬢に対する断罪シーン。
 一体シエラは何をしたのか。
 この断罪シーンは見逃せない。

「はい。あえて問います。私は、ジェシカさんに何をいたしましたか?」

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