カリスマ美容師は閉ざされた心に愛をそそぐ

 はぁ〜、配達が無事に終わったよー。

 受付の女性は合うたび、スーツをビシッと着こなし、髪も化粧もモデルのように綺麗で、だから毎回緊張してしまう。


 弁当屋の制服を着ていなかったら、絶対怖くて入れない。


 こっちに引っ越して来てから6年。一度も美容室に行ってない、ハードルが高く感じて、それに服装とか化粧とか流行に乗れない自分も恥ずかしい……。




 「閉店作業入りますよ〜!」

 「月ちゃん、お願い」

 
 ◇やっと終わったな〜、腹減ったー。今日も忙しく昼メシを食べる時間もなかったぁ。


 弁当屋にでも行くか、あー寒い。


 あれ、今日はもう終わりか?


 いつも後ろ姿の彼女、たまたま受付で
横顔をチラッと見れたが、目と目があったような気がして笑顔を返す。


 向こうは普通の顔…ほとんどの女性なら俺を見ただけで、頬を赤らめるのに。


 それなのに彼女は全く無い、何だかそれにムッとした。


 閉店作業をしている彼女は、俺に気づいていない。

    俺に気付けよ!!


 “ ぐぅぅ〜う〜 ”

 うわぁ〜あ〜、こんな時に!


    この俺が……!!


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