たすけて!田中くん
マフラーに顔を埋めて、小さく微笑む。
なんだか不思議な気分だ。
誰かにこんなことしてもらうのって小さい頃にお母さんにしてもらった以来かも。
田中くんはなんだかんだ言って私に対して普通の扱いをしてくれる。
暴力人間として扱わないし、怖がったり避けたりもしない。女子として普通に接してくれる。
それがどれだけ嬉しい事か、この人は気づいてないんだろうなぁ。
「田中くん、ありがとう」
マフラーのことだけではなく色々な意味を込めて感謝を伝えると、何故だか田中くんから返ってきたのは噛み合ない返事だった。
「ごめん、喜久本」
その返事の意味を私は理解できなかった。