たすけて!田中くん


学校に着いたらどんなことが起こるのか少し構えていたけれど、いつも通りだった。


女子からは痛いくらいの冷たい視線も相変わらず。

敦士たち一味に仕返しでもされるのかと思ったけど、何もされなかった。ちょっと拍子抜け。


しかも、薄情な田中くんはスタスタと先に教室へ向かってしまった。ひとりでぼんやりと靴を履き替えて廊下を歩く。


そんな中、金髪の男がこちらに向かって歩いてくる。

けれど、視線も合わない。声もかけられない。そしてそのまま、通り過ぎていった。


そのことに私は目を見開いた。

最近の彼なら声をかけてきたのに。




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