たすけて!田中くん
最終章 正体
平穏が戻ってきた。
そんなことを思っていた私は甘かったらしい。
放課後、日直だったため職員室まで日誌を届けて廊下を歩いていると、背後からバタバタと大きな足音が聞こえてきた。
振り返ると勢いよく誰かと衝突してしまい、床に尻餅をついてしまう。
「きゃっ」
「いっ、!」
一体誰……っと、顔を確認するとふわふわの栗色ボブが目に入り、絶句した。
もう関わりたくないと思ったひとりとこんなにも早く接触してしまうなんて。
「た、助けて!」
うるうるとした瞳を向けられ、眉間に目一杯皺を寄せた。
助けを求める相手を間違えている気がする。
この子の周りには、もっと頼りになる人がいるはずだ。