たすけて!田中くん


「酔いすぎだって〜」

そんなことを言いながら隣の男が凪沙の腰に手を回した。

顔を近づけていき、耳元でなにやら囁いているようだった。


凪沙はわずかに眉間にしわを寄せて、顔を顰めている。


「え、なんで?」

「いいじゃん、ね?」

「いやいや、待ってよ」

そんな会話を繰り広げていて、何を囁いたのかは聞こえなかったけれどおそらく俺にとっては良いことじゃないだろうな。


「凪沙」

そろそろその腰に添えている手や密着していることに苛々してきたから声をかける。

すると凪沙と隣の男が、ほぼ同時にこちらに視線を向けた。



「えっ!? あ、時間……!?」

「帰るよ」

「あ、うん」

他の人からも視線を感じて、居心地が悪かったから先に店を後にする。

これが毎回は嫌だ。もうアイツの飲み会出席禁止にしてやろうか。


しかも、なんだあの密着。明らかにあれは狙われてんだろ。あの鈍感馬鹿女は絶対気づいてないな。



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