たすけて!田中くん
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数日後、私は非常に疲弊していた。
いっそのこと学校を休もうかと考えたほど、この状況は面倒くさい。
授業が終わり、廊下を歩いていると知らない女子生徒たちに囲まれてしまった。
それは、もう何度目かの出来事だった。
「アンタ、敦士さんの彼女なんだって?」
だから、誰だよ。敦士。と言いたい気持ちをぐっと堪える。
言ったら怒りを買ってしまい、もっと面倒なことになりそうだ。
「どうせ気まぐれで選ばれただけでしょ」
「それなのに調子乗って馬鹿みたい」
いや、付き合ってないし。
顔も知りもしない男と勝手に付き合っていることにされて、しまいには部外者に遊ばれているとか馬鹿にされなくちゃいけない理由がわからない。
「だいたいなんでアンタみたいな地味な女が選ばれたわけ」
「……私が聞きたいんですけど。っ、ちょ! 痛いんですけど」
巻き髪ロングの女子が私の肩を強く押してくる。
突き飛ばすとは、これまた典型的なやつでうんざりした。
やり返そうかとも思ったけれど、多分私がやったら怪力すぎて怪我をさせる。それにもう気力が根こそぎ絡んでくる女子たちに吸い取られたのでやる気が出ない。
一通り文句を言って満足したのか、私を睨みつけて「さっさと別れろ」と吐き捨てると女子達は去っていく。
改めて思うけれど、どうやら私はとんでもないやつの彼女になってしまったらしい。