たすけて!田中くん
「でも、喜久本は女子でしょ」
「きゅん」
「は?」
田中くんが私を女子扱いしてくれた。今日はいい日だ。
にまにまとしていると田中くんが怪訝そうな顔になってしまう。
「なに、こわ。こっち見ないでほしい」
「田中きゅん。心配してくれてるの? ものすごく心配してくれてるの?」
「してない」
「ありがとう」
「どういたしまして」
田中くんの興味が私から薄れたのか再び本を読みはじめてしまった。
とりあえず面倒なことになってしまったけれど、一度私の彼氏になったらしい敦士と別れ話をしないといけない。
何年何組かすら知らないため、会いにも行けない。
どうするべきかと唸っていると、田中くんに睨まれてしまった。
「奇声、うるさい」
「はい」
……冷たい。