皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
1.騎士か魔導士か
 十歳になったら貴族は国立小等学校へ通わなければならない。十三歳になったら騎士科か魔導科を選ばなければならない。さらにその魔導科の中の優秀な女性から、皇族男児の婚約者が選ばれる。と、されている。
 これは昔から言われているこ。なぜこのようなことになったのか、誰もわからない。
 昔からの決まり事とは、そういうものなのである。誰も疑問には思わない、思ってはいけない。それに従うだけ。それに反すると、何か不吉なことが起こるのではないか、と。

 まあ、ようするに。
 その魔法の力で皇族を守る、ということを期待されているのだろう、と人々は思っていた。そしてその魔導の力を子孫へと繋いでいく。だから皇族は魔力が強いし、そこから生まれる子もまた魔力が強い。


 さて、ここにそんな岐路に立たされる少女が一人いる。
 彼女の名はミレーヌ・シラク。シラク公爵の娘で、ちょうど年は十三になるところ。
 騎士の父と兄を持ち魔導士の母を持つ、というまさしく恵まれている家族環境。
 さらに、父は騎士団長、母は白魔導士団長というまさしく恵まれた血筋。
 さらにさらに、兄も騎士団に入団し、第五騎士隊の副隊長という地位についていた。
 皇族の婚約者に選ばれても見劣りしないような家庭環境と血筋を持ち合わせている少女である。

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