皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 父親は、母にそっくりなミレーヌを溺愛していたし、兄も十二も年の離れた妹を可愛がっていた。
 二人とも、文字通り目に入れても痛くない程可愛がっていて、仕事で長期不在にした後、戻ってきたときには、その顔をミレーヌの顔にすりすりと擦りつけてくる。本当に目の中に入るんじゃないか、とミレーヌが不安に思ってしまうくらいに。

 だけどミレーヌ自身も、身体が大きくて騎士である父と兄を尊敬していたし、とても優しいので大好きだった。だから父親や兄のそんな行為も嫌いではなかった。
 また、彼女が十三歳になろうとしている今でも、父と兄にぎゅっと抱きつくと、すぐに二人は抱き上げてくれる。それだけ体格が良い二人。ミレーヌが小さいから、というのもある。
 母親は体が細くて小柄だけれど、団長として白魔導士団を取りまとめる姿は、凛としていてかっこいい。
 そんな母親がぎゅっと父親に抱き着くと、身体の大きな父親は母親も軽々と抱き上げていた。そのうち、左手に母親を、右手にミレーヌを抱き上げるのではないかと思っていたのだが、昔はできたけど今はできないな、と豪快に笑っていた。一応、ミレーヌもそれなりに大きくなってきているようだ。

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