皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
「突然、こんなことを言うと驚かせるかもしれないが」と、鉄面皮が言った。
「結婚を前提に、私と付き合ってほしい」と――。

 という結果がコレか。婚約するのが手っ取り早いけど。
 そしてこういうときにかぎって、天の声は静か。

「はい」父親の確認にうつむきながら、ミレーヌは返事をした。もう、顔が火照ってしまい、まともにエドガーを見ることができない。

「では、婚約の儀をすすめよう。立会人、ロビー・ボード」
 あ、ロビーという名前だったのか、とミレーヌは思う。

 その後、エドガーとミレーヌの名前の交換の儀を終え、二人は正式に婚約者同士となった。
 このときの二人の髪が、お揃いの組紐で縛られていたことにロビーは気づいた。
 なんだ、なんだ、俺が心配する必要なかったじゃん、と。このときの立会人が思ったとか思っていないとか。

 ――おめでとう、ミレーヌ。
 ミレーヌには天の声が聞こえた。
 ありがとう、とその天の声に向かって、心の中でそっと呟いた。
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