皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 ある日、ミレーヌたち学生も騎士見習いとして僻地任務を要請された。つまり、遠征。遠征は騎士見習いのうちに一度は体験すべき授業の一つである。これを受けないと、学校の卒業はできない。だから断ることはできない。
 しかし、騎士団長であるシラク公爵の強い要望により、ミレーヌは兄マーティンが隊長を務める第五騎士隊への同行となった。つまりのところ、職権乱用ともいう。それに気付いている者も何人かはいるのだが、口にはしない。してはいけない。
 そしてマーティンも、四年も経てば副隊長から隊長へと昇進していた。団長と隊長の職権乱用である。

 第五騎士隊の隊員は、シラク団長とマーティン隊長が怖いからか、ミレーヌのことをミレーヌ嬢、ミレーヌ嬢とかわいがってくれていた。
 しかし、ミレーヌも騎士見習いである。だから、剣を一本構えれば、その辺の男性騎士に負けないのだ。
 それは天性の賜物でありつつも、時間があれば父や兄に訓練をつけてもらっていたから。つまりのところ、彼女は努力家なのだ。父や兄に恥じないような立派な騎士になる、というその心意気は常に忘れていない。

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