皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
3.二人の騎士
 ミレーヌも十七歳になる。あと一年で学校も卒業。本来の年頃の令嬢であれば、婚約者の一人くらいいてもおかしくない年頃である。

 だが、騎士科で騎士として毎日訓練に励むミレーヌには婚約者のこの字も見当たらなかった。それよりも、あの兄の結婚を先になんとかしてくれ、と思っている。ミレーヌと年が十二も離れている兄は、今年二十九になる。見事に適齢期を逃してしまった。そして、見事に婚約者もいない。婚約者くらいいてもいいと思うのだが、なぜかいない。兄は「仕事が忙しいし、やりがいもあるから結婚しなくてもいい」とか言い出してしまう始末。

 これではシラク公爵家の跡継ぎが途絶えてしまう、とミレーヌは思っているのだが「そのときはお前の子に任せる。あはははは」と豪快に笑っていて、兄はまともに取り合ってくれない。それよりも、こんなに優しくて面白い兄なのに、どうして婚約者の一人や二人いないのだろう、とミレーヌは常々思っていた。

 兄が言うには、自分との結婚を嫌がるような御令嬢とは婚約もできないと言っているのだが、こんなに優しい兄を嫌がるような女性がいるのだろうか、とミレーヌは思っていた。

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