皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました

　楽しい時間というものあっという間に過ぎ去ってしまう。
　建国祭が終わると、第三騎士隊と第五騎士隊の休暇も明ける。その休暇明けに噂になったのが、エドガー隊長のあの笑顔だ。

　どうやらあの建国祭で、楽しそうに女性と手をつないで歩いているエドガーの姿を、数多くの騎士隊員たちが目撃していたらしい。そして、皆、凍りついたらしい。エドガーがまるで氷の魔法を周辺に放ったのではないか、と思われるほどに。残念ながら彼は騎士であるため、そういった魔法の類は使えない。

「よ、エドガー」
　と、超絶不機嫌なエドガーに対して、陽気に声をかけてきたのは第四騎士隊隊長のロビーだった。
　昼休憩。
　食堂で食事をしようとやってきたロビーだが、そこで今、噂のエドガーを見つけた。彼を見つけたら、面白おかしく話を聞くしかない、と、ロビーは思っていた。

「なんだ」
　エドガーは、見たものを凍り付かせるような冷たい視線で、ロビーに視線を向けた。