皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 ミレーヌはそんなルネに視線をちらっと向け、それからシャノンの方を見ると、彼女の脇に置かれている何かに気付いた。

「それ、どうしたの?」

 ミレーヌはシャノンの前に立ち、彼女の脇にあるものをじっくりと見た。
 恐らく教科書だろう。水に濡れている。よく見ると、シャノンの服もところどころ濡れている。

「シャノン。今はこれしかないけれど、使って」
 ミレーヌはハンカチを差し出した。
「無いよりは、マシだと思うから、ね」

「ミレーヌ様?」
 シャノンは腫れぼったい目で、ミレーヌを見上げた。
「様はいらないって。あのときも言ったでしょう? 私は、シャノンとお友達になったつもりでいたけれど、違っていたのかしら」
 シャノンは、首がもげるのではないか、と思えるほどぶんぶんとそれを横に振った。

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