皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
10.複雑な関係
 祭り明けのエドガーのあの目撃情報も本当にただの噂だったのではないか、と思えるくらい時間が経った頃、ミレーヌは卒業に向けての学科レポート作成のために図書館へと向かうところだった。実技と学科、二つとも合格点に達しないと、卒業できても騎士団には入団することができない。
 ミレーヌの目標は、卒業後、もちろん騎士団に入団することだ。だから何が何でも、この学科レポートで合格点をとる必要がある。

 図書館は学校の建物とは別にあった。中庭を挟んで向こう側。そして、その図書館の建物と並んで騎士団の建物がある。
 図書館に行くためには、中庭を抜けて行かなければならない。気持ちが逸って、ミレーヌはなぜか小走りになっていた。図書館は逃げないというのに。

 そんな中庭のベンチに見知った顔が二つ。
「あれ? ルネにシャノン、どうかしたの?」
 ミレーヌは声をかけた。なぜなら、シャノンの目が腫れぼったく見えたからだ。

「あ、ミレーヌ」と気まずそうに返事をしたのはルネ。
「ちょっとね」と彼女は作り笑いを浮かべている。泣きそうな表情にも見える。切なくて悲しいような、そしてどうしたらいいかわからない、というような困惑の表情。

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