皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
12.隊長、事件です
 事件というものは突然起こる。できることなら「これから事件が起きますよ」とせめて十分前には予告して欲しいものだ。

 ミレーヌとルネは図書館へ行くために、校舎の脇を歩いていた。ここから中庭を抜けて図書館へ。今日は天気も曇り空でイマイチなせいか、外を歩いている人間なんて他にいない。時期が時期なだけに、皆、校舎の中でそれぞれの課題をこなしたり、隣接している訓練場で訓練をしたりしているのだろう。もしくは自宅で課題やレポートこなすために、早々に帰宅したか、のどれか。
 二人は、とっくに学科のレポート提出を終えていた。だから、図書館へ向かっているのは娯楽のためであった。卒業に向けた課題の緊張感から解放されたい、という思いもある。

「きゃ」と女性の声が聞こえた。

「今、何か聞こえなかった?」とルネが言い、二人顔を見合わせる。

「やめてください」と聞こえたように思う。
 でも、どこから聞こえた? と二人できょろきょろと周囲を確認する。

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