皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 ミレーヌは、全力で走った。隊長室へ向かうのは、二回目だ。廊下は走らない、なんてかまっていられない。廊下も全力疾走。

 扉をノックするのも煩わしい。それでも、ノックだけして返事を待たずに入室する。
「マーティン隊長」
 勢いよく扉を開け、兄の名を呼ぶ。
「すぐに来てもらえませんか? シャノンが」
 両手を太ももについて、身体を二つ折りにして言った。息があがって、それだけ言うのが精いっぱいだった。

 マーティンはいつもの様子と違うミレーヌに気付き「わかった、すぐ向かおう」と席を立つ。つられて、エドガーも立ち上がる。そして幸いなことに、隊長室にはこの二人しかいなかった。

「シャノンが、校舎の、屋上に」
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