辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2
 窓の外の景色がゆっくりと進み、セシリオの姿が見えなくなると途端に不安がこみ上げてきた。サリーシャはとっさに窓から身を乗り出して後ろを振り返った。セシリオは先ほどと同じ位置に立ち、まっすぐにこちらを見つめている。
 
「閣下、メラニー様と一緒に素敵な会を準備してお待ちしておりますね!」

 風でなびく髪を片手で押さえながら声を張ってそう叫ぶと、セシリオの口の端が上がるのが見えた。サリーシャはアハマス領主館の内門を超えてその姿が見えなくなるまで、ずっと後ろを見つめ続けた。

 アハマスの領主館が見えなくなると、サリーシャは代わりに、馬車の中から後ろ後ろへと流れていく外の景色を眺めていた。

 旅はとても順調だった。

 アハマスの領主館からプランシェの領主館は馬車で丸二日の距離だ。遠いが、前回の王都への十一日間の移動に比べれば、ずっと楽だ。

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