離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 翌朝、出勤前にシエナから封筒を手渡された。 

もう一日、日本にいる時間はあるが、こちらでの仕事が山積みで、出勤を余儀なくされている。

「蓮斗さん…… 、これ…… 私の名前は書いてあるから」

 中を確認した途端、背筋からザワリとしたものが這い上がって来て、心臓をギュッと鷲掴みにされた様な気がした。

「離…… 婚届……?! ……本気、か? 」

 眼鏡の奥の瞳を、大きく開いて、息を呑む。

「…… っ…… 、わかった…… 」

 それだけ、絞り出すのが精一杯だった。

 落ち着く為に、ハーーーーッと一回、深い深い、溜息を吐く。

「俺の方は、帰って来てからでも、いいか?」

 少し時間を置いて、冷静に話し合おう。

 どんな結果になるにせよ、俺はシエナ、お前を離す気は無いからな!

「…… いってらっしゃい」

 彼女の悲しそうな、微笑みが……、心に強く残った…… 。



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