離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
失う
 その日の仕事は有り難い事に、朝から予約が入っており、忙しく離婚について考えている暇がなく、落ち込んでいられなかった。

「シーちゃん、なんかあったのか? 凄いブスなんだけど」

 昨日、殆ど眠れなく、泣いたのも相まって、目が腫れて、私の顔は酷いことになっている。

「メイクアップアーティストなら、もっと上手く隠せよ! 」

 フーッと、呆れ気味に溜息を吐かれ、チーフに顎でクイッっと、そこに座れ! と言われて、逆らう気力もなく、素直に従った。

「昼メシ、一緒に行くか? 」

 隈隠しと、顔色の悪さを手早く直して貰い、上司の気遣いを見せる、チーフの優しさが、暖かい。

「ありがとうございます。 でも、今日はお弁当持って来たんで」

 とても食欲なんてわかず、心配させない様に、誤魔化した。

 



 帰り道、夕食の食材を買おうして、ハッとする。

「…… そっか、もう蓮斗さんの分の夕食は、作らなくても良いんだ…… 」

 帰国した時だけでもと、必ず作っていた手料理も必要なくなる。

 離れていた時は感じなかったけれど、思ったよりも、私の生活は、蓮斗さん中心に回っていたんだな…… と、今更実感した。

 













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