離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「蓮斗さん! ああ、良かった! 蓮斗さん、私よ、貴方の妻…… (になる予定の)結菜よ! 」

「ユ……イナ…… ? 」

 ズキズキと痛む頭で、確かに、誰かの名前を夢の中で、呼んでいたことを思い出す。

「……ナ? 」

 …… わからない…… 目の前にいるお化け……? 死神……、いや、彼女が、俺の妻…… ?
 
 …… 俺は、こんなゴテゴテと、厚化粧する女は苦手だった筈だが…… 趣味が変わったのか…… ?

「蓮斗さん、気分はどう? 地震が発生して、私を助ける為に、頭を打って、三日も意識がなかったのよ」

 香水の強い匂いに、痛い頭が、余計に疼き、顔を顰める。

「…… 三日……。 …… 確か君は…… 秘書……? の、白鳥だったか? 」

 確か、仕事が全く出来なくて、辞めて貰った筈じゃなかったか…… ?

 自分の記憶が曖昧で、ハッキリとした確信がない。

「いやですわ、秘書の前に、貴方の愛しい、つ、ま、ですわ。 身の回りのお世話は私が全てするので、心配しないでくださいね。 今、先生を呼びましたから、診て貰いましょうね」

 そう言って、白鳥は、俺の頬に手を当てて、スリスリッと、何度も撫でる。

 背中がゾワリッとして、思わず、手を払う。

「んまぁっ、照れたりして、可愛い人」

 白鳥は俺の腕に頬を当てて、擦り寄って来る。

「離れてくれ…… 気分が…… 悪い…… 」

 …… 妻の筈なのに、触られたくないと感じるのは何故だ……?

 眉間に寄った皺が、更に深くなる。

「大変! 先生! 早く診て頂戴」

 





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