離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 翌朝、私はグッっと歯を食い縛り揺れる気持ちに蓋をして、心を決めた。

「蓮斗さん…… 、これ…… 私の名前は書いてあるから」

 出勤前に封書を手渡すと、中を確認した彼は、ハッと息を呑み一瞬目を見開くと、書類を凝視して、目を泳がせた。

「離…… 婚届……?! ……本気、か? 」


 普段の彼は、吊り目がちな印象の強い目に、鼻筋がスッと通って、理性的なクールなイケメン。

アッシュグレージュの透き通る様な髪を後ろに流して、冷静沈着、頭脳明晰と言う言葉がピタリと当てはまる。

 知的眼鏡を掛けていて、よくよく見ないと変化がわからない程、表情が殆ど変わらない。


三年の結婚生活で、感情の揺れが大分わかるようになったが、それでも初めてではないかと思うくらい、珍しく瞳の奥を揺らして、動揺を隠さずに、真っ直ぐに見つめてくる。
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