ねぇ待ってそれ聞いてないっ!



「―――コウくん!好きな人がいるの!?いつの間にできちゃったの!?なんで教えてくれなかったの!?というか誰!?」


蝉の大合唱が少しだけ抑えられた夕方。


今日も今日とて幼なじみであるコウくんと一緒に帰宅している途中のこと。


私は気になって気になって仕方がなくて耐えられなくて。


辺りの騒音に負けない音量でコウくんに詰め寄った。


途端に歪む、愛しの幼なじみの顔。


そこらのモデルに劣らないと有名な顔です。


形のいい切れ長の目が鋭くこちらを睨みつけるから、日が容赦なく照りつけて暑いはずなのに身体が震えちゃう。


耳元で大声を出されたら誰だってイラっとしちゃうよね。


いくら付き合いの長い私にも殺意のこもった目を向けちゃうよね。


それはわかった。次からは声を落として冷静に話すことにする。


だから、無言で離れていくのだけはやめてくれる?


待って、置いていかないで。いつもの優しさで私の歩幅に合わせて歩いて!!


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