約束のひだまり
涙の温度
「誰のおかげで飯が食えとるとか!」

パシン!

ガシャン!

「女に暴力振るうなんて最低!お願い、もう離婚して、、、」

 私はすぐにお母さんのところに駆けつけた。
 お母さんが殺される。
 いや!
 やめて!
 お願いだから!
 怖くて必死で父を止めた。
「父さん、お母さんに何したの!」
 私は父の腕を掴んだ。震える小さな手で。
「フッ、自業自得だろ」
 そう父は鼻で笑った。
 まただ。これで何度目だろう。リビングでの夫婦げんかは二階にもよく聞こえる。いや、夫婦げんかというにはほど遠い。父が怒ったとき確かにお母さんも少しは反論するけど、結局は父がこうして手を上げてお母さんは逃げるように家を出る。こういうことは大抵夜に起きるから、お母さんは夜の街を少しドライブして数時間後に帰ってくるのがお決まり。私も一緒にドライブするときもあるけど、別にお母さんの味方をしたいわけではない。まして父の味方なんて。
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