シークレット・ウェディング
 だから期待はしなかった。遼が私に恋愛感情を向けてくれる日が来る、なんて。


 それでも。強引で、それでいてだれよりも優しくて。私が悩んでいればすぐに気づいて相談に乗ってくれるところとか、たまに見せる無垢な笑顔とか。


 遼のすべてが──好きだったんだ。今まで付き合っただれよりも。ううん、世界中のだれよりも。


 だからプロポーズされたとき、一生遼を愛し抜こうって心に決めた……のに。


 恋は盲目。私はあいつの本性を忘れていた。


「……はぁ」


 本日百万回目くらいのため息。


 同棲を始めて二週間経ってもほとんど家に帰ってこないなんて信じられる? 


 どうせまた女‪のところを遊び歩いているに違いない。


 明日は婚姻届を出す約束の日。

 
 もしかしたら帰ってきてくれるかもという希望をかけて、結婚式なんて金も手間もかかることはできないけど、今日は豪華にパーティーでもしようとがんばって用意したのに。 ‬‬‬‬‬‬‬


 本当に愛されていると思っていた自分がバカみたいだ。


 ふっと自嘲の笑みをこぼすと、同時に頬を伝った涙。


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