いつでも側に〜一途な両片想い〜
 そっと差し出されたハンカチで涙を拭いていたら、大きな温かいぬくもりに抱きしめられた。

「ウッ、ウッ」

 今まで辛くても、演技以外で泣いたことはない。泣き方がわからなかった。そもそも、何が泣くほど辛いことかがわからなかった。

 でも今は、直人お兄ちゃんに抱きしめられ、無意識に涙が出てきた。

 安心感からか、十八年分の涙が溢れ出したのか、涙が止まらない。

「鈴、泣きたいだけ泣いたらいいんだ。俺が全部受け止める」

 小さい子をあやすように、抱きしめて背中にある手を優しくトントンと叩いてくれる。

 どれくらい泣いていただろう。

 私が少しずつ落ち着いた頃、お兄ちゃんがお母さんとのことを話してくれた。
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