婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 心温まる和やかな空気に私が目を潤ませていると、

「それともう一つあるんだ」

 お父様がちょっと控え目に話を切り出しました。

 いくつか話があるとのことでしたね。感動に包まれている場合ではなかったです。両親の愛情は嬉しかったので、部屋に帰ってから存分に浸ろうと思います。
 ほんわかとしたムードの中にいた私は姿勢を正しました。

「フローラが紹介状を書いたトリッシュ医師の件だが、今日連絡があったんだ。面会をしたいということだったんだが、私ではなくてシャロンに任せようと思っている。こっちは専門外だから縫製などを手掛けているシャロンの方が力になれると思っているんだ。それとフローラがアドバイザーとしてついてくれると助かるんだが。どうかな? 仕事を増やしてしまって申し訳ないが」

 お父様がすまなさそう顔で私を見ましたが

「大丈夫ですよ。先生の手作り品を商品化したいといったのは私ですし、責任もってお世話します」

 胸を張って答えました。

 「わたくしも履いてみたけれどすごくよくて、おかげで足のむくみが減って楽になったわ」

 お母様の足元を見ると室内履きを履いていました。実は私も履いています。底を補強してクッション性を出していているためか、さらに履き心地がよくなって部屋ではますます手放せなくなりました。
 紹介状を送った時に先生がもう一足贈ってくれたのです。それをお母様にプレゼントしましたが、すぐに室内履きの虜になりましたわ。

 私の目に狂いはなかったってことですね。
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