婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「すごいですね。本物みたい」

 時折、感激ひとしおといった感で川の流れに目を止めるローラ。

「あら、お魚がいるんですね」

「気づいた? ミニチュア版だけど、せっかく本物そっくりに作ったからね。魚も泳がせているんだ」

「これは何ですか?」

 腰を折って覗き込んでいたローラが指をさした。俺は隣に立って同じように覗き込む。小さな魚が群れを成して泳いでいる。

「これはメダカだね。ほら、もうちょっと先にいる赤色と黒いのが鯉だよ」

「メダカ、それと、鯉」

 魚を指さしながら確認している仕草がかわいくて笑みを誘う。
 
「フナとか、あとザリガニやエビもいるよ。ほかにもいろいろ、カエルも。この前まではおたまじゃくしもいたんだけどね」

「おたまじゃくしも?」

「うん。みんな成長しちゃったからね」

「そうですよね。大きくなりますもんね」

 何気にがっかりしてるなあ。

「見たかった?」

「はい。図鑑でしか見たことなかったので、本物を見たかったです」

「だったら、来年だね。あー、そうだ。これからなら、蛍が見れるよ」

「蛍? ほんとですか?」

 すごい食いついてきたんだけど。
 ものすごく興味があるんだね。これも図鑑で見たのだろうか。
 自然が豊かなきれいな水辺に生息する昆虫だから、王都ではあまり見ることができないからね。
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