婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「へえ。ローラ専用の庭があるんだね。協力しようか?」

 レイ様の顔がぱあと明るくなって瞳が輝いています。薄明りの中なのに、はっきりと表情が見て取れるのはなぜでしょう?

「いえ、いえ。ちょっと聞いてみただけですから。それにお忙しいレイ様の手を煩わせるわけにはまいりません」

 これは失言? 墓穴を掘った? えっ? えっ?

「大丈夫、大丈夫。うん、近いうちにローラの邸にお邪魔することにしよう。庭園、見てあげるよ」

 ええっ……私はそんなつもりで聞いたわけではなかったのですけど。

「レイ様、そんなお手間をかけさせるのは失礼になるかと思いますし、作るかどうかもわかりませんし、業者を教えて頂ければこちらで手配しますから、お気を使われなくてもよろしいですよ」

 王子殿下が一貴族の元へ私的な用事で訪問することなどほとんどありませんよね。国王両陛下も許可をくださらないとは思いますが……

「ここの庭園は俺も携わっているんだ。まずは見てみてそれから業者に連絡したらいいと思うよ。相談に乗ってあげるからね」

 声がルンルンと弾んでいるように感じるのですけれども。取り返しのつかないことを言ったわけではありませんよね? 

 ちょっと、不安になってきました。
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