婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「ローラ?」

 私を呼ぶ声にふと我に返りました。気が付くと覗き込むように顔を見られていました。
 意識した途端、顔がかあっと熱くなりました。

「あっ……すみません。ぼーとしていました」

 ドキドキと脈打つ鼓動がレイ様に聞こえはしないかとはらはらしながら適当にごまかします。
 不意打ちで至近距離のレイ様の顔は反則です。いつになったら慣れるのでしょう。

 呼吸を整えるために深呼吸をしました。

 顔を覗かれたくらいで動揺していては心臓が持ちません。もう少し精神を鍛えなくては。淑女たるものいついかなる時も冷静に、感情をむやみに他人に見せてはいけないと習ったはず。

 そうです。ここは冷静に、冷静に。

「レイ様、例えば小さな庭園に池を作ることは可能でしょうか?」

 私の質問に不思議そうな顔をしながらも

「規模にもよるけれど、庭園に相応しい大きさであれば作れるんじゃないかな?」

 優しく答えてくれました。

「そうなのですね」

 小さくてもよいから欲しいわ。なるべく自然のままを生かした私の庭園は噴水よりも池の方が似合うと思うのよ。

「何? 池が欲しいの?」

「はい。私専用の庭園があるのですけど、そこに池を作って魚とか育てたら癒しにもなって楽しいのではないかと思ったのです」

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