婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「? 女性ですよ」

 そこは気にするところなのかしらと思いながら返事をすると、霧が一気に消え失せたようにレイ様の顔が晴れやかになりました。

 機嫌が良さそうなので、多少の疑問はあるものの追求しない方が得策なのかもしれません。

「それじゃ、これからサンフレア語で会話をしてみないか? 使わないと本当に忘れちゃいそうだし。あと、交換日記とまではいかなくても、お互いに手紙を書くっていうのはどう? もちろんサンフレア語で」

 レイ様の提案にびっくりして、はしたなくも口をポカンとしてしまいました。会話はともかくも手紙ですか?

 文通のようなものなのでしょうか。

 確かに単語も文法も難しい分使わないと忘れてしまいます。

「私でいいのですか?」

 王子殿下の語学力についていけるのかしら?

「ローラがいい」

 ご指名を受けてしまいました。
 レイ様の役に立つのかはわかりませんけれど、私の勉強にもなりますよね。わからないところは教えて頂けるでしょう。

「それではお願いします」 

 向かい合わせに座ったレイ様の美貌と笑顔に時折見惚れながら、サンフレア語で会話と食事を楽しみます。

 早く帰らなければという思いは、いつの間にか空の彼方へと吹き飛んでいました。
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