婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「ありがとうございました。これで契約成立です。これからもよろしくお願いします」

 わたくしは書類をまとめると写しをサマンサ先生へと手渡した。
 
「いろいろとわがままなことを言いましたが、わたしの方こそ、よろしくお願いします」

「いいえ。契約に関してはわがままになっていただいて構いませんよ。お互いに利がないと成立しませんからね。意見をぶつけ合って、より良いものを作り出し、より良い条件を引き出すことが大事だと思っておりますから」

「そう言って頂けるとありがたいです。ついついネガティブなことばかり考えていましたから」

 サマンサ先生は自分を過信しない慎重な方だから、契約まで時間を要することになった。

 趣味で作っていた室内履きがまさか商品化されるなんて、思ってもいなかったでしょうし、するつもりもなかった。
 たまたま、フローラの目に留まったのがきっかけですものね。

『売れる見込みがついてから正式に商品化すること』


 これが第一の条件だった。

 
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