婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 まずはわたくしのアトリエの職人たちと使ってみて改良を加えながら、お客様に履いてもらい試してもらった。

 ことのほか、評判が良かったので試しにお店に置いてみた。
 口コミのおかげもあってか、徐々に売れるようになったため商品化のめどが立った。
 特許も取っているので、勝手に利用されることもないでしょう。

 これからは本格的に商品化に向けて始動をしていかなければ。将来的には隣に工房を建て製造と販売をそちらに移すつもりでいる。

「サマンサ先生。アトリエに行きませんか? そちらでみんなとお茶をしましょう」

「よろしいのですか?」

「はい。ぜひ。今日は正式に契約が成立しましたから、その報告も兼ねて。みんな喜ぶと思いますわ」

 サマンサ先生は嬉しそうに顔を綻ばせて微笑んだ。

 アトリエに何度か足を運んでいる先生はすっかりみんなと打ち解けている。早く商品化をと待ち望んでいたのは、縫製を手掛けている職人たちだった。

「今日から室内履きのオーダーメイドも始めようと思いますの。最初のお客様はサマンサ先生が相応しいと思うのですが、どうでしょう。お願いできますか?」

「……はい。喜んで」

 サマンサ先生は感極まった様子で言葉を詰まらせていたけれど、やがて満面の笑みで答えてくれた。

 アトリエに顔を出して結果報告をすると待ってましたとばかりに職人たちから歓声が上がった。
 この場にフローラがいないのは残念だったけれど……

 そのあとはみんなで契約成立のお祝いを兼ねたお茶会を開き、楽しいひとときを過ごしたのだった。
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