婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「さあ、帰りましょう」

 王妃陛下の声掛けで私たちは歩き出しました。

 そういえば、レイ様にお礼を言うのを忘れていました。
 明日は会えないでしょうから、ここでお礼とあいさつをしなければと思っていると

「フローラ様」

 ちょうどエルザに呼び止められました。
 皆さんに待ってもらえるように声をかけてからエルザの元へと行きました。

「お靴が届いておりますので」

 トレイの上には私の靴とストッキングが置かれています。
 脱ぎ散らかしだったであろうストッキングはきちんと折りたたまれていました。
 すぐ履くつもりだったから乱雑に扱ってしまっていたわ。これも恥ずかしい。いついかなる時でもきちんとしなきゃだめね。
 
「エルザ、ありがとう。すっかり忘れていたわ」

 室内履きのまま外へ出るところでした。
 さっきまで座っていたソファに座り靴を履かせてもらいました。皆さんは隣室で待ってくださっているみたいで、靴を履くところを見られないでよかったです。

「この室内履きはこちらでお預かりしておきますので、明日お帰りになる際にお寄りくださいませ」
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