素直になれない…
翌日、目が覚めると朝だった。
裸に布団をかけた状態で眠っていた私の横には男性が寝ていて、私はその人の顔をまじまじと見た。

マズイ。
この人・・・

そこにいたのは秘書課長の田代雄平さん。
仕事ができて見た目も悪くない超優良物件なんだけれど、どんな美人が言い寄ってもなびかないって噂の人。
まだ若いながら秘書課長なんて重責を担うだけあって、仕事にも人一倍厳しくて笑った顔を見たことがない堅物。
それに、芽衣ちゃんの彼氏である奏多さんの親友だ。

「どうした、まだ早いだろ?それに、今日は土曜日だ」
目が覚めたらしい雄平さんが私を見ている。

その表情に驚きは見えない。
もしかして私だって気づいていたのか、それとも私を知らないのか。

「あの・・・ありがとうございました。私、帰ります」

この状況でありがとうはおかしいかもしれないけれど、無意識に口から出ていた。

「待って、これ」

急いで着替えをする私に雄平さんが差し出した名刺。
そこにはプライベートの電話番号とアドレスがかかれている。

「何、ですか?」
「登録しておいてほしい」

なぜ登録の必要があるのかはわからなかったが、ここから逃げ出したい私はわかりましたと返事をして受け取った。
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