素直になれない…
まあ、付き合ってもいない女にいきなり妊娠を告げられた訳だから、狼狽える気持ちもわからなくない。
でもね、別に結婚を迫った訳じゃない。
ただ、「妊娠しました」と報告しただけ。
人として、赤ちゃんの親として、伝える義務があると判断したに過ぎない。
もちろん一人で育てるつもりだし、父親の事は誰にも言うつもりはない。
何しろ、私たちはセフレなんだから。

「悪いけれど、私行くから。要件はメールでくれる?」
「はあ?」
雄平は呆れたようにポカンと口を開けた。

だって仕方ないじゃない。
私は家を出てしまったわけで、やらないといけないことは山ほどあるんだから。


「わかった。出よう」
雄平がやっと重たい腰を上げてくれた。

「じゃあ、私はこれで」
「バカ、帰すわけないだろ」
「は?」
「今夜泊るところがないなら家に来い」
「いや、でも・・・」

言いたいことはあるけれど、はっきりと口にするのは躊躇した。

「行くぞ」
そう言うと私の持ってきた大きなかばんを雄平が抱え、店を出てしまった。
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