素直になれない…
車を走らせること20分。
着いたのは高そうなマンション。

「スゴッ」
思わず声が出た。

「ここはHIRAISIが所有している物件だ。別に俺がすごいわけじゃない」
「はあ」
そうですか。

雄平自身は平石財閥とも創業一家である平石家とも一切の血縁関係はない。
ただ、平石本家の息子である奏多さんと親友で学生時代から彼のご両親とも親交があった。
肉親の縁は薄いものの、頭がよく機転の利く雄平を気に入った奏多さんのご両親は平石物産に就職させ経営陣の一角になるようにと優遇した。
雄平もまた、学生時代から恩のある平石のご両親に応えようと今現在敏腕を振るっている。

「まあ、管理職用の社宅ってところだな」
「ふーん」

で、あなたはそこで同棲をしていて、今日は別の女を連れ込もうとしていると。

「行くぞ」
「う、うん」

エレベーターの前でもう一度呼ばれ、私は肩を落としたまま雄平に続いた。
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