エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「雅史さん、私のこと全然見ようともしてくれないから寂しいんです」
「好きでもないのに思わせぶりにするほうが罪だろう」


芹菜がしゅんと肩を落とす。

言い過ぎたかとも思ったが、その気もないのに期待を持たせるほうが酷だ。雅史は足を組み換え、ソファの背もたれに体を預けた。


「それじゃ、ひとつだけでいいから私に思い出をくれませんか?」
「思い出?」
「今夜ひと晩だけでいいから、朝まで一緒に過ごしてください。そうしたら雅史さんをきっぱりあきらめますから」


芹菜は切羽詰まったように懇願して雅史を見つめた。
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