俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

 実はこの舞台裏でひさしぶりに母と会った。共演するとは言いながらも、一緒に撮影するシーンは一回のみで。映画の撮影の最中、ほとんど話すことはなかったのだ。

『こはちゃん、今日は一緒だね』

 先に話しかけてきたのは母だった。
 私とは異なり纏うのは和装で、成熟した大人の色気を感じさせるのがさすがだ。曖昧に頷けば、母は続けた。

『色々質問されると思うけど、いつもの通り笑っておけば大抵大丈夫だからね』

 おそらく玲二との結婚について聞かれる可能性もあることを言っているのだろう。事務所からあらかじめその話についてはNGにするかどうか決断を迫られたが、私は自らの口で伝えることに決めた。

 それが私の芸能界でやっていく覚悟の証だと思ったからだ。

 舞台へ登壇すると、眼前に広がる客席には大勢の人たちが座っていた。劇団時代も舞台に立っていたが、これほど大勢の人間の前で話すことは初めてで。
 心臓の鼓動が耳にまで伝わってくる。
< 272 / 291 >

この作品をシェア

pagetop