俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
「次は新小岩、新小岩。お出口は右側です」
アナウンスで目を開け電車を降りる。
ぼんやりと無意識に歩いていると気づけば一人暮らしをしているアパートの前へ辿り着いていた。
寄り道もせず、ただ自宅へと帰ってきた自分の生真面目さに苦笑した私はポケットに入っていた鍵を取り出す。
憂鬱な顔でアパートの203号室までたどり着くと、そこには黒いスーツを着用した男性が立っていた。
最近この近くで不審者による痴漢行為が横行しているとのチラシを見た記憶があり、警戒した私は足を止めてその男を観察する。
男は手に煙草を持ち、手すりに手をかけてぼんやりとしていた。
けれど視線を感じたのかこちらに気がつき、私に顔を向けた。
「……っ、!」
思わず息を呑む。
その男の端正な顔立ちのせいもあったが、それ以上に見覚えのある顔だったからだ。