初恋は海に還らない



 そこには、住宅街の曲がり角から私を凝視する、自転車に跨った青年が居た。
 肩までまでありそうな髪の毛を緩く一つに括っていて、気怠そうにこちらを見つめている。
 制服を着ていることから、多分年齢は同じくらいだ。


 私はあまりの無遠慮な視線に後退りをし、勢い良く店に飛び込んだ。



「こ、洸っ! な、なんか居たっ!」
「なんかってなんだよ。ちょっと待て、今メールの返信してんだよ」
「なんかめちゃくちゃ見てくるの、変な男子が」
「あ? 変な男だぁ?」



 洸はギャアギャアと騒ぐ私の話を流し掛けたが、男と聞くと私の手から箒を奪い、入り口に向かい歩いて行く。そして、ドアを思い切り開いた。



「オラ誰だ!!……あ、理玖」
「洸、お前女子高生連れ込んでなにしてんだよ」



 ドアの目の前にはさっきの怠そうな青年が立っていた。



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