初恋は海に還らない



「何もしてねぇよ!!」
「あー、うるせー。ジジイは声がデケー」
「なんだとコラ……」
「……つーか、なんか、もう平気なの?」
「……ん、あー、まぁそうだな」
「へぇ」



 理玖と呼ばれた青年は、洸の目をじっと覗き込む。すると洸は少しだけ俯き、曖昧に返事をした。


 いつもはうるさいくらいなのに。こんな洸初めて見る。二人の間には妙な雰囲気が流れていた。



「そんなことよりこれ、ばーちゃんから」



 理玖はその雰囲気を断ち切るように、洸に袋に入った何かを差し出す。袋を開く洸の後ろから中身を覗き込めば、パックの焼きそばが二つ入っていた。



「洸とそっちの奴にだって……で、誰なのそれ」
「白澤さんの孫の都。都、コイツは理玖。海の家のばーちゃんの孫」
「は、はじめまして……」
「ふぅん、白澤さんに似てねぇ」



 先程と同じように無遠慮な視線がザクザクと刺さる。この人表情があまり無いから、何を考えているのか分からなくて怖い。



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